今年でブランドデビュー20周年を迎えるデニムブランド「YANUK」(ヤヌーク)。2003年にデザイナーのヤエルとアヌックにより立ち上げられ、L.A.デニムブームを席巻しながらも、今なおデニムラバーたちから熱い支持を得ています。
当時からその流れをつぶさに見つめてきたスタッフのコメントとともに、アーカイブを振り返ってみる今回の企画。今のモデルにたどり着くまでにあった紆余曲折、様々なドラマを、ウラ話満載でお届けします!
Hirai(営業・MD):2003年当時、「YANUK」はインポートブランドとして販売がスタートし、 僕は営業を担当していましたが、とにかくとんでもない売れ方で、毎月毎月アメリカから入荷し、各セレクトショップに届けたらそのまま売れる感じでした。
MIKU(PR):その当時からお取引きがあるセレクトショップの中で、現在もお取引きをしているところはありますか?
Hirai:当時はほとんどのセレクトショップでお取り扱いしていただいており、今でもバーニーズはじめ多くの取引先で展開していただいてます。
MIKU:こうして過去のアーカイブを見ると、カラーや加工も特徴的ですよね。
Hirai:だいぶ黄ばんでしまっているけど、このスラブ感とか、デザインももともとかなり特徴的でした。その当時はインポートデニムブームでどのブランドもポケットのデザインアイコンで勝負をしていましたが、多くのブランドがバックポケットの刺繍で差別化している中で、YANUKは6ポケット、そしてディテールごとにデザインしているのが特徴的でした。それもあってデビューと同時に大ヒット。
MIKU:実際にどれぐらい売れたんですか?
Hirai:10万本くらいだったかな~前過ぎて定かではないけども。
MIKU:すごい!この少ない型数と色で!それって、すごいことですよね。ということはその当時、このデニムを穿いている人が街にたくさんいたということですよね?
Atsuko(デザイナー兼ショップマネージャー):それはもう、たくさんいらっしゃいましたよ!
MIKU:金額感は今と変わらないですか?
Hirai:金額は今よりも若干安い¥19,800が平均価格でしたが、その当時にしたらデニムとしては、かなり高額だった。 僕が入社した時はプレミアムジーンズのトレンドを牽引していた「7For All Mankind」(セブン・フォー・オール・マンカインド)も取り扱いブランドとしてあって、 その当時はファッション誌でも軒並み掲載されていて、クレジットを見て「カイタックインターナショナル」の名前を知ったのが入社のきっかけだったんだよね。
Gushi(PR):なるほど。セブンがプレミアムジーンズブームの火付け役だったというわけなんですね。
Atsuko:セブンが大人気だった時、私は中学生だったけどそれでも知っていたくらい大流行していましたよね。
Hirai:入社したばかりの時にまだ「YANUK」の取り扱いがスタートしたばかりだったにもかかわらず、大勢のバイヤーで展示会が賑わっていたことを覚えている。
MIKU:海外での人気はどうだったんですか?
Hirai:海外でもすごかった。もともと海外で火がついて、すぐにカイタックインターナショナルで取り扱いをさせてほしいと言って独占契約を結んだんだよね。
MIKU:その海外でも最初はわずかこのモデルだけの展開だったのですか?
Hirai:それだけ。厳密に言ったら、一番最初はこれと、6ポケットのブーツカットの2型の2色ずつ計4品番のみ。
MIKU:その当時、販売していたのはアメリカと日本だけですか?
Atsuko:当時、ヨーロッパでも売れていたみたいですよね。
MIKU・Gushi:へえ~~~!
Hirai:世界中でL.A.のプレミアムデニムがブームだったんだよね。
MIKU:ブーツカットという形もぴったりトレンドにはまっていたんですね。
Hirai:そうそう、その時はブーツカットオンリーだった。
MIKU:股上が浅いのが特徴なんですね。
Hirai:そう、お尻が半分出てしまうくらい(笑)その当時の海外セレブたちがこぞって穿いて、爆発的人気だった。
MIKU:このデニムはまだインポート時代のものですか?
Atsuko:まだインポートですね。
Hirai:おそらくこのへんでデザイナー・ヤエールが抜けた。実際ヤエールが携わったのは、3年くらいだったかな。
MIKU:こうしてみても、ガラッとデザインが変わってますもんね。このベルトループもすごい。一つだけねじってる。
Atsuko:こういうデコラティブなディテールが流行ってたんですよね。
MIKU:それにしても手間がかかってそうですね。。。刺繍も大変そう。
Gushi:高そう。。。
Hirai:おそらく¥24,000ぐらいだったかな。
MIKU:この時代の「YANUK」はステッチが特徴的ですよね。
Hirai:そうだね。Y刺繍と6ポケットは残しつつ、しかもこれはメキシコで作っていたんだよね。
MIKU:え?メキシコ!?これはフロントに刺繍が入っていますね。ビジョナリースティッチ?
Atsuko:ほんとうだ!
Hirai:これは商品名だね。
Hirai:そして転機は2010年。「YANUK」ブランドをアメリカ本国では継続しないことになるタイミングで、「YANUK」の商標権をカイタックインターナショナルで買い取らせてもらうことに。
Atsuko:私もこのタイミングでカイタックインターナショナルに入社したんですが、ここでも売れていたのはワイドフレア系のデニムでした。
MIKU:今と比べて生地が薄めですよね。
Hirai:そう超ライトオンスのデニム。
MIKU:これもデニムなんですね〜。
Hirai:今では全てのモデルにストレッチが入ってるものの、当時はこの粗野な雰囲気を演出したくてコットン100%の生地を採用していたんだよね。
MIKU:インポートのデザインからアレンジした箇所はどのあたりですか?
Atsuko:こだわりでオリジナルボタンを作ったものの、お客様の反応はあまりよくなかったですね。
Hirai:分厚いから締めにくいとか。
Atsuko:上質なボタンなのですが、女子目線では厚みがあって、ネイルをしている手では留めづらいとの声が多かったです。
MIKU:革ラベルのデザインは最終的には初期のモデルに戻っているんですね。
Atsuko:リブランディングしてから戻したんです。Y刺繍も大きくしました。
Gushi:え、なんでですか?
Atsuko:Yが見えやすいように。小さいとつぶれて見えないから。
MIKU:でも結局これも初期のデザインに戻っているんですね。
Hirai:そう、迷って、迷って、迷って、試行錯誤を繰り返して今の形にたどりついている(笑)
Gushi:ではこの辺は迷走の入り口ぐらいの感じですね(笑)
MIKU:その中でもこれはヒットしたというモデルはありますか?
Atsuko:この薄くないカラーのブーツカットは売れましたね。
Hirai:これは定番ど真ん中だったと思う。
MIKU:ここからは岡山の総社工場での生産ですか?
Hirai:そうだね。
Atsuko:なんかこのあたりはかわいい感じ。
Hirai:ポップだよね(笑)
Atsuko:このあたりは男性デザイナーが女性らしいデニムをイメージしてデザインをしていた時期ですね。「YANUK」は当時から、“女性発信のデニムブランド”という点を守っていた気がします。
Hirai:そう。当時は女性のデニムデザイナーってほとんどいなかったんだよ。「7For All Mankind」も「AG」も男性デザイナーだったし。
Atsuko:女性デザイナーが手がけるからこそ、フィット感が最高!というイメージでしたよね。
MIKU:そしてそして、2010年、2011年!デザイナーが違うから見た目の印象も全く異なりますね。
Hirai:2012年から完全に社内企画でリブランディングをすることに。そうしてようやく今のパトリシアに行き着いたんだよね。
Atsuko:メンズライクな雰囲気に振って作ってみたこともあるんですが、やはり女性らしいデニムという「YANUK」スタート時からのデザインポリシーを守ることを徹底したんですよね。
Atsuko:そこで「女性らしいデニムとはなんだろう」と考えて出したのがパトリシアアンクルでした。 「YANUK」の魅力のポイントである、他のデニムブランドにはないフェミニンなムードやフィット感が素敵、と支持されていることをもう一度見つめ直し、このときに腰が浮かないベルトを開発しました。
Hirai:開発には1年かかったよね。
MIKU:女性は絶対気にする箇所ですもんね。
Hirai:縫製やパターンを徹底的に分析、研究をして、どう他と差別化をしていくか、本当の「YANUK」らしさをどうしたら打ち出せるか、 社内みんなで頭を捻りながら試行錯誤を繰り返し、この伸びるウエストベルトの開発に至ったんです。
Atsuko:普通に作ってしまうとしゃがんだ時にお尻が見えてしまう欠点を克服するのに、何度も工場に足を運んで試作を繰り返しました。
Gushi:それは自社工場を持っているからこそできることでしたね。
MIKU:2012年のデニムはそれにしても股上が浅いですね!
Hirai:いちばん時代を感じるところだよね(笑)
Atsuko:今くらいの股上の深さではそんなに浮かないけれど、この時はしゃがんだらパカっと開いてしまう感じでしたよね。この浅さなのに腰が浮かないっていうのが当時画期的でした。
MIKU:たしかに。幼い子供ながらに「お尻が見えてるな~」と思ってましたもん(笑)
Atsuko:パトリシアが大ヒットし、色々なモデルを出そうと言って次に出てきたのがセシル。当時、L.A.でもボーイフレンドデニムが流行っていたんです。
MIKU:あれ?このSBLは今の加工のベースになっていますよね。
Atsuko:たしかにこれは長く打ち出していましたね。
MIKU:私も入社した当時は営業だったので、シルエットチャートを見ながらパトリシア、ケイ、セシルで販売ロールプレイングをしていましたもん(笑)この3つを押さえておけば大丈夫、と。
Atsuko:セシルがすごい売れて、そのあとにケイですね。
MIKU:パトリシアとセシルの中間ですよね。
Hirai:今のルースの原型だね。
Hirai:紆余曲折を経て、色々と削ぎ落としながら今に至る。そこからリアリーライトデニムやスピルプルーフも仲間入りし、徐々に今のラインナップに近づいてきました。
Gushi:あれ?このあたりで壁に当たりましたよね?
Hirai:トレンドの変化等で、売り上げが伸び悩んだ時期だったんだよね~。
MIKU:そんな苦しい時期もありましたね~当時営業だったんで覚えてます。
Atsuko:企画と販売計画の意見の相違もありましたね。企画する者としてはワイドや新しいシルエットを提案したかったけれど、ベーシックなラインナップを強化していこうと舵取りをした結果思ったような結果が出ず、そこで改めてトレンドのエッセンスを入れようと再度方向転換しましたよね。
Hirai:売上もV字回復どころか、W回復だったね(笑)
MIKU:でも、これまでの様々な苦労があってこその今でしょうね。
Hirai・Atsuko:いやー、感慨深いですよ。ほんとうに!
MD Hirai
Designer Atsuko @yanuk_atsuko
MENS PR MIKU @yanuk_miku
MENS PR Assistant Gushi @yanuk_gushi